妖怪百姫たんのこと

先日、スマホ向けソーシャルゲーム『妖怪百姫たん!』のサービス終了が、ゲームを運営するマイネットさまより発表となりました。

 

「百姫たん」は、実は僕がエンターブレイン(正確にはKADOKAWAなんですが)で働いていた頃に開発に関わり、作家デビューに伴い退社してからも、主にメインシナリオの執筆など外部ライターとして運営に関わっていたタイトルでした。

 

その後、運営がKADOKAWAからマイネットさまに移管され、しばらく離れていたのですが、昨年からSF作家・柴田勝家さんと共同執筆というかたちで、再びメインシナリオの執筆に携わっていました。

 

「百姫たん」のサービス開始は、僕が作家デビューしてからほぼ一年半後だったので、自分は作家業を続ける傍ら、最初期のキャリアとして関わっていたタイトルが長く続いていることをそれとなく眺めていました(親戚の近況を聞くような感じ)。

 

そうしたなかでのサービス終了の連絡を頂きました。

残念な気持ちはありながらも、まずは長期に渡るサービス運営にかかわったすべてのスタッフのみなさま、本当にお疲れ様でした。

 

 

というわけで、僕が「百姫たん」で書いたシナリオは以下になります。(作業フォルダを久しぶりに掘って確認しました。幾つか抜けがあるかもしれませんがご了承ください)。

※基本的に特記事項がなければ単独シナリオです。

 

■メインシナリオ

・第一部「百姫巡逢篇」:関東・中部・四国・近畿(ここまで初期実装)、東北・九州(プロットのみ)・中国・帝都(一部共同脚本)

 

・第二部:「百世転生篇」:第一章・第二章・第三章・第四章・第五章・第六章・第七章

 

・第四部:「百代神変篇」:第一章・第二章(ともにSF作家・柴田勝家さんと共同脚本)

キズナ譚(キャラクターシナリオ)

・メイン、ゲストキャラクター、ボスなど一部のキャラクターのみ

 

■コラボシナリオ

・「のんのんびより りぴーと」コラボシナリオ・キズナ譚(がんばって全部書いたのんな)

・「ハッカドール」コラボシナリオ・キズナ

・「教えて!ギャル子ちゃん」コラボシナリオ・キズナ

 

■妖怪セリフ

・初期実装妖怪(一部、別ライターにお任せしたものもあった気がするのですが、初期分は書いたはず)

・追加妖怪については適宜(第二部までは主に各章のゲスト妖怪、敵キャラ含めてセリフを書いていた記憶があります。第四部はボスキャラ中心に勝家さんと共同)。

 

これ以外に、第一部・第二部ではエリアマップの場所・地名選定・シナリオサブタイトルなども担当しました(これをやっていたおかげで今でも僕のGooglemapには全国都道府県の霊場・妖怪伝承の土地がピン止めされ過ぎてます。地図をズームアウトすると日本列島が「☆」で埋まる)。

 

あとは主に初期実装分の妖怪については、セリフの音声収録の立会いとディレクションもしました(1キャラ5ページくらいでも100体以上あったので収録台本がすごい厚さになりました)。

 

「百姫たん」は、主人公「あるじ」が美少女妖怪たちと全国を冒険しながら絆を深めていく…というエンタメの王道的なストーリーでした。

 

自分が当初、シナリオ執筆で意識していた主題は「旅」、旅を通して出会い繋がれていく妖怪との「親愛」、消えゆく伝承への「記憶」、かけがえのない相手との「別離」、そして旅の終わりに抱く「再会」への希望。

 

…などと、色々と書いているときは考えていたのですが、最終的には作品のキーワード、ゲームシステムの根幹にもなっている「キズナ(絆)」なのだと思います。

 

あるじと猫又、犬神、河童のキズナ。ともに冒険した妖怪たちとのキズナ。時には敵対する相手とさえも結ばれるキズナは、「絆」という言葉よりももう少し広い範囲・意味を持つ言葉になりました。

 

誰かと誰かが交わることで生じる繋がりは、僕たち人類にとっても根源的なもので、ひょっとすると、「妖術百姫たん」が長きにわたり多くのあるじ(ユーザー)に愛され、遊ばれ続けたのは、そういう理由もあったのかもしれません。

 

僕自身、「百姫たん」に込められた「キズナ」という普遍的なテーマのおかげで、とても長い物語を書かせてもらいました。

とても得難い経験でした。

 

シナリオライターとしての自分としては、第一部・第二部を書き終えた時点で、自分が「百姫たん」で書ける「あるじ」の物語は全部書いた、と思いました。

ですが、その後に別の方のもとで新たな物語が紡がれました。

そして再び自分が勝家さんとともに「百姫たん」に関わるとき、そこには新たな物語、旅の行く先が見えるようになりました。

 

これを結末まで書けなかったことは残念ですが、どこかまた別の作品へ自分のなかで繋いでゆければと思っています。

 

改めまして、すべてのあるじの皆様に記して御礼申し上げます。

まことにありがとうございました。

開発・運営に携わったすべてのスタッフのみなさま、まことにお疲れ様でした。

 

吉上亮 拝